春水の頃。
雪がほどけ、
土の奥に眠っていた水が、
ゆっくりと動きはじめる季節。
目に見える大きな変化はなくても、
地下では確かに流れが生まれている。
制作室にとっての春水も、
そんなものかもしれません。
一本の木を植えたあと、
すぐに森になるわけではない。
けれど、根のまわりには
静かに水が集まりはじめる。
いまはまだ、
小さな部屋の中で、
机の上に散らばるメモや
描きかけのスケッチや
名前のついていないキャラクターたちが、
水を待つ種のように並んでいます。
物語は、
最初から完成された形では現れません。
ある日の光や、
ふとした記憶や、
何気ない一言が、
細い流れとなってつながっていく。
それは
音を立てないはじまり。
やがて形になる前の、
透明な時間。
この場所では、
急いで芽を出そうとはしません。
水が満ちるのを待ち、
土がやわらぐのを待ち、
自然に根が伸びる方向を探していきます。
T-ARANの世界もまた、
いまは春水の頃。
目に見える動きは小さくても、
内側では、
静かに物語が流れはじめています。
もし足元の湿り気に気づいたら、
それはきっと、
次の芽吹きの前触れです。
まだ名を持たない水の気配が
形になるもののそばで、静かに流れています。
その流れが、
物語の向きを少しづつ決めていくのかもしれません。



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