「春水の頃」の1日は、
特別な出来事から始まるわけではありません。
朝、静かに目が覚めて、
いつも通りの朝食をとり、
掃除をして、火の準備をする。
それから、水を汲みに行きます。
畑の様子を見て、季節の変化を確かめる。
やがて店を開けると、
顔なじみのお客さんが、ぽつりぽつりとやってきます。
大きな事件は起きません。
でも、その一つひとつが、少しずつ積み重なっていきます。
徳三と清乃。長年連れ添ったこの老夫婦は
かねてからの計画があった。
それは夫婦ふたりで新しい和菓子を作ること。
うまくいく日もあれば、
少しだけ噛み合わない日もある。
水の量、混ぜ方、火の入れ方。
ほんの少しの違いが、
出来上がるものを変えていきます。
大切なのは、
どんな一日を過ごしたか。
その積み重ねが、
最後にひとつのかたちになります。
そしてそれは、
ずっと先の物語の中で、
誰かの手に渡るかもしれません。


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